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涙は未来のために取っておく

2020.05.23|Blog

ここ数ヶ月いつのまにか知らず知らずのうちに

張り詰めてしまっていた心の糸が解けていく

 

 

TOKIHO

『ANNA-Ⅳ-L』

Cotton Linen Silk Onepiece

cloudy / deep sea

1 size(one size)

¥42,000+tax

 

 

『ANNA』はデザイナー吉田季穂さんが最も愛する画家

ヴィルヘルム=ハマスホイの妹名アンナに由来します。

「その名に特別な意味は無い」といつものように

シャイ過ぎるデザイナーは照れくさそうな顔で答えます。

 

その不確かな答えの真意の先に少なからず私が感じるのは

ハマスホイを象徴する曖昧でいて美しい色調と

時を留めし静寂の何気ない日常風景の絵画中に

まるでTOKIHOのお洋服が実在しているかのような

不思議な既視感を憶えるという事です。

 

ここ数シーズンに渡りデザイナーの深層にある思考

依然として続く「襟」というものへの問いかけ。

後襟にその気配を隠し持つことで得られた美しいVネック。

そして1枚の布を大きく使うことを意識しながら

果たして洋服の「原点とは?」という禅問答のような

新たな境地への問いかけを始めた事に起因する

研ぎ澄まされた末に残されたはずの2アウトタック。

簡単に言葉で綴るならばミニマルなタック処理ですが

1つの事柄に何度も何度も自問自答を投げかける

デザイナーの内なる心の声が作り出したとも言える

オリジナリティある1枚の布へのアプローチ表現です。

 

袖口にも

背面にも

自らの連鎖する思考を試行するかのように2タックを施し続けます。

 

秀逸なパターンで分量感を上手くまとめたAラインシルエット。

パタンナー出身のデザイナーが作るお洋服。

シルエットの美しさと着用時のストレスの無さからくる

着心地の良さは多くのファンを魅了し続けています。

 

(モデル身長154cm)

STOLE:ANSPINNEN Silk Cashmere Knit Stole

INNER PANTS:humoresque Silk Shirring Pants

SHOES:Vialis FOR poefu Pointed T-strap Shoes

ハマスホイの絵画を象徴する室内風景の数々。

その部屋に漂う空気を色に例える事がもし出来るとすれば

こんな色なのかもしれない抽象と具体を行き交う美色。

モノトーンの絵画に色を置いていくようなイメージで。

ほのかに紫がかった美しきモーブグレーの色に合わせた

淡いピンクと鮮やかなレッドがそれぞれに映えます。

 

 

L-deep sea / R-cloudy

世界中のデザイナーを虜にする尾州で仕立てられた生地。

流通している生地のはずなのにTOKIHOのためのようなそれは

初見のゴワッとした表情の見た目を良い意味で裏切る

滑らかな手触りや軽さに素材の良さを物語る自然な艶感。

 

コットン・リネン・シルクの3者混紡。

経糸には世界三大と評されるスーピマコットン

緯糸にはフレンチリネンとシルクを交互に織られています。

細番手糸のスーピマコットンそしてこの生地で使用される

細番手リネンを織ることが出来る機屋は数が少なく希少です。

 

deep seaは深遠な海に例えた限りなくブラックに近いネイビー。

cloudyは曇天の空に茜射す儚き夕刻を記憶するモーブグレー。

植物性素材のコットン・リネンに動物性素材のシルク。

素材由来が異なる双方をこの曖昧さ加減を残しながら

上品かつ綺麗に染まるように2度の染色を施しています。

 

 

(モデル身長154cm)

INNER:ゴーシュ100/2 Mild Jersey Butterfly French Sleeve T(this color sold)

SKIRT:humoresque Silk Gather Skirt

SHOES:R.U.「Jo」Ribbon Lace Long Vamp Shoes

透け感もなく1年を通して着用可能な生地感で

軽めのアウターとしてもシーズンレスに使い勝手も良い。

深い深い海の底まで微かに届いた光の行方を

布ドレープの中で美しい陰影を見せるdeep sea。

きっと深海が知らない爽やかなグリーンを巡り会わせて。

 

 

 

 

ここ数ヶ月いつのまにか知らず知らずのうちに

張り詰めてしまっていた心の糸が解けていく。

 

今春夏のTOKIHOがはじめて届いたある日

きっといつもなら無意識過ぎて感じ得なかったはずの

そんな感情への気付きに涙が溢れそうになった。

 

「はじめましての日」目を合わせることさえ出来なかった

シャイ過ぎるデザイナー吉田季穂(ときほ)さんと出逢って4年。

「はじめましての日」が嘘のように今となっては

実は人懐っこいくらいの人柄に会えば話は尽きない。

 

ただ決して饒舌というわけではなくボソボソと話す

声のトーンや間の取り方は一緒に居て落ち着く。

何事も深く考え過ぎるくらい考え抜いたその答えは

いつも心地よく染み入るように静かに腑に落ちてくる。

 

それら全てがTOKIHOのお洋服の心地よさと同じくして

いつのまにか私の中で無意識すぎるくらいに

心地よい感情となっていたのだろうと思うのです。

 

未だ来秋冬の展示会もままならない中のTOKIHO。

新作のお洋服を見れないことだけでなく

吉田さんに会えない日々は寂しくて仕方ない。

思い余って泣いてしまわないようにと思いながら

昨日久しぶりに電話をかけてみた。

 

相変わらずボソボソと話す吉田さんの心地よい声や間合い。

何も変わらないような日常がそこにある気がした。

 

ここ数ヶ月いつのまにか知らず知らずのうちに

張り詰めてしまっていた心の糸が解けていく。

 

デザイナーや作り手の性格や感情を映し出すお洋服。

私はその性格や感情とともにお洋服を届けられたらと思う。

 

いつのまにか張り詰めた糸を解いた涙の行方は

きっとこの先に続く幸せな未来のために取っておく。

 

 

 

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